1994 春

建畠覚造

評論

関 直美展 -木と鉄の造形- に寄せて

関 直美さんは1979年前後、多摩美術大学の彫刻科で指導した学生でした。当時、世の中は学園紛争で混沌としていたが、彼女はどんな時代にあっても彫刻と云うハードな作業に取り組み、卒業後は多角的に制作活動を続け、広く社会環境と繋がりながら様々な捜索実験を重ねて今に至ってます。

彼女の仕事はいわゆる具象彫刻ではなく、どちらかといえば抽象彫刻の領域にはいると思いますが、そうしたジャンルに組み込まれる事をむしろ拒否しながら彼女独特の方法論を追求し、絶えずそれを発展させ、新しい展開を試みてきています。

抽象彫刻が社会から評価されるようになったのはごく最近の事で、それまでは人々の理解を得られる事が少なく、困難な作業の連続であったと思います。それ故にこそ、それに打ち勝つ彼女の強靭な体質と努力が、今日見られる極めてユニークな魅力ある造形を築いてきたもの、と私は確信しています。

かのじょは、ことに最近自らの勢いを早めながら空間における造形の可能性を具体的に彫刻に定着し、たゆみ無い時間を集中的に使っているようです。

主として木と、木をもとにした動き、たとえば発條を木と組み合わせる事による不思議な造形は私たちを魅惑してきましたが、彼女の作品については皆さんに見て頂く事が一番であると思います。

彼女は現代彫刻家の中でもアウトサイダー的な立場をとっていますが、しかし彼女は、あくまでも彫刻という造形にこだわりを持ち、その道筋を貫いていく確かな姿勢が見られます。

今後の活躍に私は期待しています。

1994年 春

彫刻家   建畠覚造