2001.9 / 千空間

関 直美

カタログ

Storage Capacity -記憶容量-

 この場合記憶装置に保存されているのは、二酸化炭素の容量でありたい。いや私が作り続けてきた年月か。

 若い頃、アトリエ建設の為の資金作りに会社勤めをしたことがある。もちろん創作活動を続けながらではあるが10年も勤めてしまった。そんなつもりは全く無かったのだが、アーチストは確かに良い感性を持っているが、仕事を通して社会適応能力を身に付けたらもっともっと良くなるだろう、と上司にほだされたのも理由の一つである。

 これは、かなり正解であったと今になって思う訳なのだが、会社を辞めてすぐは感性は磨かなければ光らない!という現実に気づき愕然とした覚えがある。

 忙しかったが、それでもまあ楽しく仕事をさせていただいた。展覧会が近くなると休みをもらい作品を制作した。作品展示が終わると会社に私の席はもう無いかな、と思いつつ出社したものだった。

 何らかの形で社会に反応し得る作品を作れたら、また画廊という白いキューブの中で何が表現できるか、絶えず新しい何かを探る実験の場を共有したい。

 ある種ミニマリズムから出発した私の作品は、ただ今その枠付けの中に有機的な何かを取り込んでみたく実験している。(果たして感性は磨かれているのか!)