2005.5.9 / 千空間

三田晴夫

毎日新聞

興味そそる表現の新展開

 新しい脱皮を印象づけたという点では、関直美の個展も見逃せまい。まず一つは、素材が長年手がけてきた木材から、ホワイトセメントに変わったこと。そして、もっと顕著な一つは、これまでの大きな単体を組み上げて形象化することから、おびただしい数の小さな同形を集積する手法へと転じたことである。

 この変換は、作家の内部において、物そのものよりも空間形成の意識が勝ってきたことの表れなのか。とにかく展示室の壁や床をびっしりと埋めるだけでなく、それらはガラス戸をまたいでベランダにまではみ出している。群れをなすのは、同じ型から取った4.5センチ角で高さが10センチの頂がとがった家か塔のような形。使われた総数は軽く4000個を越すそうだ。

 壁には垂直に突き出た格好で並べ、床ではもちろん直立している。部分的にベンガラ系の色材を加えているので、ピンクと白のだんだら模様が視野を覆い尽くす。それらをミニチュアの建物と見れば、メルヘン風の幻想に誘われもしようが、先端のとがった突起に思いを奪われると、その光景はより深層心理的な色合いを濃くするに違いない。