あえてかたちをつくらない、技術やマチエルを無視する

関 直美 / アートプログラム青梅 図録 / 2015

あえてかたちをつくらない、技術やマチエルを無視する、オーソドックスなものに対するアンチテーゼのスタンスから、安価で手に入る結束バンドを使い始めた。部材に穴を開け一本を差し込み、2本目のカットした頭のみを差し込み結束する。数えられる本数から何万本へ、この単純作業を繰り返す。

ホワイトセメントシリーズの作品もしかりである。まず型をつくる。次にお菓子をつくるように、白セメントにピンクをサンドイッチにして流し込む。この作業を繰りかえす。

かつて単純な幾何学形態の構成が主流だった彫刻は、余分なものを剥いで剥いで、その単純さを際立させるために面を徹底的に磨く、など技術の習得を必須とした。それこそ女工になったように、研磨したものだった。その頃から、要するに単純作業が好きだったことになる。

「作品は実験、失敗を恐れず勇気を持っていどみなさい」とは亡き恩師の口癖、大いに乗せられて突き進んできたが、へこむこともありそれこそぺしゃんこ、になる。ま、それはそれとして真摯に受け止めるしかなく、明日の糧になればたいしたものだ。
糧はあるのか。私に限らず多かれ少なかれ、作家は既成の概念からどう解き放たれるか、日々試行錯誤しているはずである。