アートの宿場―川崎の美術館

宮田徹也 / 日本近代美術思想史研究 / かわさきでアート2016 / 2016.11.1 - 11.27

「かわさきでアート」は2016年で6回目を迎える。川崎大師大山門前仲見世通一帯と東海道かわさき宿交流館という2つの会場を有意義に使用する術を得たことは、川崎という街でアートを実現する可能性を今後も探り続けていくことをも意味している。 また、仲見世通一帯では通りと店内、交流館では展示室と集会室を異なる目的で使用し、活動の幅を広げると同時に、どのような場面でも自由に展開する現代美術の特徴を見せつける結果ともなった。

私は第1回から欠かさず現場に立会い、何度か評を書いた。関直美のwebに掲載されているので読んで欲しい。今回、関直美から、東海道かわさき宿交流館3階企画室のキュレーションの要請を受け、受託した。私は公立/私立近代美術館が現代美術の作品を数多く展示する姿を見て、現代アーティスト達が自主的に行う展覧会に美術館を呼ぶ企画を思いついた。川崎に多くの存在する公立/私立美術館が「アートの宿場」として集うことを夢見たのだった。

今日、公立美術館の冬の時代と言われ、予算が全く下りないとしても、何処にも属さない現代美術アーティスト達が集めた金額とは比較にならないほどの予算で運営されている。運搬、保険、展示といった作品に対する実務的な条件の上に、広報、宣伝のためのフライヤ、記録集であるパンフレットと、一つの展覧会を開催するには、莫大な費用がかかる。アーティストにとって会場を何度も訪れるための足代も高くつく。それでもアーティストは、川崎を盛り上げたいのだ。

「アートの宿場」は初めての試みでもあるため、今回は「中村正義の美術館」のみの参加となった。川崎は横に長い。「中村正義の美術館」は小田急線よみうりランド前駅と京王相模線よみうりランド駅の間に位置し、「アートかわさき」が開催されるJR・京急川崎駅に近い川崎大師と東海道かわさき宿交流館とは地理的に遠く隔たっている。中村正義は「東京展」を組織したように、「今日の動向」に敏感なアーティストであった。中村正義と現代美術の競演を楽しんで戴きたい。