街なかに美術を混在させる展示の面白さ

関 直美 / Art Kawasaki 2017 実施報告書 / 2017

既成のギャラリーや美術館における展覧会は、美術に興味を持っている人が足を運ぶが、街なかに美術を混在させる展示の面白さは、不特定多数の人々に観てもらうことにつきる。その反応は、大変興味深い。祈念に、お礼参りにと、目的を果たした人々は一つ肩の荷が下り、すがすがしい気持ちで作品に接する。素直に、質問してくる。アートの催しは、単なるイベントではくくれない付加価値があるはずだが、そのことに言及してくる。

七回目を迎えて、楽しみにしてくれる人がますます増えうれしい限りである。ガラスドローイングを経験した子供たちが高校生になってこの展覧会に帰ってくる。これもうれしい。 いにしえの時代、寺は人々が交錯することでもたらされた情報交換の場であったし、物が動く商いの場であった。こんな風情を想い描きながら、美術を介して人とつながることができる、こんな場所が他にあるだろうか。

イベントにつきものの観客動員数であるが、毎日何百人と訪れありがたい限りである。また、地域の暮らしに根ざしている寺はお参り客だけではない。朝に夕なに、手を合わる大人からにぎやかに子供が走り回る。日本の原風景をとどめている。

私ども美術家が憂いているのは、ピカソやゴッホは知っているが、現代美術は何もわからないと片づけてしまう大人たち。せめてヨーロッパ並みに現代美術が語れる大人を一人でもいいから増やすのが、今後も引き続く課題である。