Faroe islands / Denmark / Japan Art Exchange

関 直美 / アーチストインレジデンス報告 / 2019

この夏、アーチスト イン レジデンスでフェロー諸島に4週間(8月19日~9月16日)滞在した。

点在する羊が見えるだろうか
草しか生えない土地はどこまで行っても羊、草の緑に点在する羊と石積みの低い塀が織りなす曲線や石積みの小作小屋、それはアイルランドを彷彿させる風景である。 それも道理で、フェロー諸島に最初に住み着いた人はアイリッシュの修道士だそうだ。この諸島はイングランドの北のシェットランド島から遠くない西北に位置している。きっと穏やかな海を見計らって渡って来たのだろう、などと妄想をふくらませるには十分に静寂な島々であった。ただし急勾配の岩壁にも羊たち、これは平坦な土地のアイルランドではあり得ない。
ちなみにフェローとは羊が語源だそうだ。

Kamban’s House
18の島からなるフェローの首都はトーシャン / Torshavn(人口約2万)、二番目の都市クラクスビーク/Klaksvikは鯨つながりで和歌山県太地町と姉妹都市提携している。
滞在したトーシャンにあるカンバンスハウス / Kamban’s Houseは、日本で言ったら建畠覚造(1919-2006)時代の彫刻家、ヤヌス カンバン / Janus Kamban(1913-2009)のアトリエで、草屋根の外観、間取りは36平米のアトリエ、書斎、2xベッドルーム、にキッチン。



選挙ポスター
レセプション風景
おりしも8月31日の選挙投票を控えて選挙の看板があちこちに並んで、この間私たちの広報活動は停止せざるを得なかった。投票日の翌日から活動を再開したが時間の余裕がなく、当初予定していた展覧会の開催期間はレセプションのみとなった。が、多くの人が来場した。特筆すべきはメディアを通じて、ハンドボールプロチームにこの7月から所属した日本の女子2名が監督と共にやって来てくれた。
サッカーをはじめスポーツが盛んな国である。

制作活動の合間を縫って陶芸、平面、ガラス、立体など5作家のアトリエ訪問やコミッションワークの現場などを見学した。
作家がひとりで受けるコミッションワークのほか何人か組んでのコミッションワークがあり、彼ら5人はそれぞれのコミッションワークに大体関わっていた。例えば教会、大学、プールなど運動のための施設、病院など。
アイルランドなどでもそうだったが、とりわけ人口の少ないこの国でのアーチストとコミッションワークの関わりかたは密度が濃い。また切手デザインも彼らの仕事のひとつだ。
カンバン/Kambanの彫刻作品は町のいたるところで見ることができる。もう一人はハンス ポール オール オールセン/Hans Paull Olsen(1957‐)、この二人の彫刻が町に点在している。これも小さい都市ならでは、だろう。

コミッションワーク
Trondour Patursson
Sigrun Gunnarsdottir

Janus Kamban
Janus Kamban
Janus Kamban

Hans Paull Olsen

このプロジェクトの最初の一歩としてとらえるならば、うまくいったのではなかろうか。

Faroe-Japan overlapping experience 2019
2019年9月11日 Kamban’s House, Kiokkaragota 42, Torshavn, Faroe

日本参加作家:井上 結理、関 直美、細馬 千佳子
フェロー諸島参加作家:グーリー ポルセン / Guðrið Poulsen、ペニラ マイスロフ / Pernille Mejslov、シグルン グナスタツィア / Sigrun Gunnarsdóttir、ヨン ソンニ イェンセン / Jón Sonni Jensen


井上 結理
関 直美
関 直美
細馬 千佳子
Guðrið Poulsen
Pernille Mejslov
Sigrun Gunnarsdóttir
Jón Sonni Jensen
→ Works