2001.10.30 / 千空間

三田晴夫

毎日新聞

(中略)

一貫して木を素材としてきた関直美の彫刻の枠組みにとらわれない、創意に富んだ造形には定評がある。たとえば板状に組んだ木に金属のバネを取り付け、飛び乗った鑑賞者が、ユーモラスな動き体感できる旧作などは、近年はやりの参加型作品を先取りしていたともいえよう。

しかし、関の作品を着実に進化させてきたのは、その創意を安直な装置化へと向かわせず、あくまで造形の内側にとどめ置いた姿勢だろう。たとえば「記憶容量01-1」と題した今回の大作は、近年の進境ぶりを遺憾なくうかがわせる。それは太いベイマツの角材を組んだ巨大な矩形が、頼りなげな3本の細い足に支えられて、宙に持ち上がった格好の作品だ。

その角材の内壁からは、脚と同質の細い線形がめくれ、成長する植物のように上方へと舞い伸びていく。全体を沈ませようとする重力と、それを無化するような浮力とが際どくせめぎ合い、見えない緊張の糸を周囲にはり巡らせているふうだ。角材に走るチェーンソーの刻線も雄弁この上ない木肌を浮き立たす。