2003 / 東京日仏学院
岡部あおみ
カタログ
おんなのけしき 世界のとどろき
場との対話
(中略)
丘陵地帯にある東京日仏学院は、庭園と一体化したモダンな近代建築で、ル・コルビュジエのヴィラ・サヴォワを思い出させる。関直美はミニマル・アートやプライマリー・ストラクチャーの流れを汲む立体を手がけ、70年代に活動を開始した希少な女性の作家だ。
豊かな森林の伝統をもつアイルランドの彫刻シンポジウムに何度か招待され、大規模な作品制作の実績を積んできたが、東京での野外制作は今回がはじめてだ、庭園から室内のエントランスへ、さらに庭園を見下ろせる2階のロビーの壁面に、関直美の開放系の作品が循環する。設置される風景と場のまったく異なるしつらいのなかで、彼女の作品はゆったりと息をし、くつろぎ、のびのびと空間を抱擁する。
庭園には小型の『Mr.よつあし』と大型の『Mrs.よつあし』の彫刻インスタレーションが、設置される。サイズがあべこべのユーモラスな「よつあしご夫妻」は、アーカイックな埴輪のようなゆったりした下肢のもち、胸部と頭部は土と植物という幻想の人体である。学院にかよう学生たちは公開制作される作品や作家の姿にじかに触れる機会をもつ。今回の展覧会のために青木由佳が関直美のアトリエを訪ねて制作風景を撮影した。庭園の作品は展覧会が終わった後も、「朽ちるまで」残される。
関直美の作品は余白を生み、対話を可能にする空気を流す。木目の削り跡に残る木との対話、そこに宿った記憶に、ひそかに未来が芽生えてくる。
(中略)
関直美 1949生まれ 川崎市在住
●屋外と室内の新作木材インスタレーション 4ヵ所
●庭園:Mr.よつあし Mrs.よつあし
女性としては珍しく野外の大規模な木材による環境彫刻を手がける作家は、すでにアイルランドの交際シンポジウムに参加した経験をもち、2002年9月にも同国のロック・ブーラパークランドの国際彫刻シンポジウムに招待され、「ツリー・イン・スカルプチャー」を制作した。