2008 / ギャルリー志門

香川檀

カタログ

「ジェンダー/女・もうひとつの美」

いまどきジェンダー?-そんな声が聞こえそうな気がする。ジェンダーは「超える」ものと言われて久しく、美術のなかの「女性的なもの」を言い立てるのは見識が狭いと思われがちのようだ。

ところが、このテーマのもとに作品を寄せてみようという女性作家は予想外に多かった。今回、ここに招いた4人の作家は、ジェンダー抜きでも充分に語られうる仕事をしている人たちである。だが、あえて女性性に拘ることで新たに見えてくるものがある。それをここでは「解く/聞く」と呼んでみたい。

(中略)大ぶりの木材を使った彫刻で知られる関直美は、一転して薄手のベニヤ板と金属箔による白塗りの立体を並べる。ここでも開口部が決め手であり、中から花のおしべのような突起物が伸びて出ている。存在の重量感から「解かれて」繁殖し始めた生命体のユーモアを含んだ軽みは、出来上がった自己のスタイルに縛られない作家の、さばさばした自由さを感じさせる。

(中略)女性的なものがもたらす「もうひとつの美」があるとすれば、それは、自己を「解く/聞く」ことによってその外部や内部にあるこれらの他者性を、深々と受けとめることではないだろうか。