「Braid」/ 2022.04.30

関谷泉 / 美術とダンスのDuoシリーズ「Dance Vision」から /出演:関直美 深谷正子 / 評論 / 2019

アトリエ第Q芸術で行われているDANCE VISION、ダンサーの深谷正子さんと美術家の関直美さんのコラボ、「DUO Braid」素晴しかった。舞台中央に吊るされた三枚の巨大な布を関さんがひたすら三つ編み状に編んでゆく。感情を編むように。皮膚を編むように。愛を編むように。
「編む」という行為の途方もなさ、緻密で困難な仕事が関さんの手によって進行するなか、深谷さんが舞台に現れる。後ろ向きで壁を撫ぜ触っていく。この触れるという所作や、靴を脱ぎ捨てた脚の動きがとても生々しく、編み込まれる布のなかの一本の生糸の瞬間瞬間の輝きや陰りを見ているような錯覚を覚えた。関さんの編む行為をさらに拡大鏡で見ているような。生糸の静かに沸騰するような濃厚なエロティシズムがある。
三つ編みのロープは完成すると、布本体から切り離され、縛り付けられた板ともに宙に浮かぶ。ロープは生き物のようにのたくる。
そのロープに体を絡みつかせながら踊る深谷さんは、自身をロープに編み込んでいくようにも見える。そして胸を反らせては窄める行為が何度か繰り返される。吸ったり吐いたり、鳥が翼を広げたり畳んだり、そうやって空気をひたひたと編んでいく。

生きるという行為、人と出会ったり、モノを作ったり、それは丁寧に編む行為なのだろう、きっと。サエグサさんの抜群の音効の背後に、関さんと深谷さんの吐息がずっと聴こえているような、真剣なエロスに満ちた公演だった。昨日、公演を見てからずっと興奮が続いている。


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